国立国会図書館 関西館



仕事で京都のけいはんな学研都市に取材に行く。この都市は、京都・大阪・奈良の三府県にまたがる京阪奈丘陵に位置していて、中心部では、およそ数百メートルに1つの割合で、見た目にも立派な研究所がいくつも連立している。どれもが超ド級の近代建築。


取材の合間に訪れた国会図書館関西館は、素材感豊かで、落ち着きのあるいい建築だった。建物の内部は、直方体型に伸びやかに切り抜ぬかれた空間が、直角に交わるようにいくつも組み合わされるかたちになっており、そのせいで到る所で遠近法的な視点が生み出される構造になっていた。


また、地上から見たときは斜めになった芝生の列がただ何重にも並んだソーラーパネルのように見えていたのが、地下の図書室から見上げるとその隙間がちょうど斜めに差し込む陽光の入口になっていたり、地下1階と同じレベルに植えられていた木々が、地上から見ると雑木林がすっぽりと地中に埋もれてしまったみたいに見えたりと、ひとつのものが地上/地下によって別の見え方や意味を帯びるようなギミックが組み込まれていたことが、非常に面白かった。


ただ、辺鄙な土地にある関係上、人が全然やって来ないこと、そしてやはり東京館に比べて圧倒的に主要な本が少ないことは、しょうがないにせよ残念なところだった。


余談だけど、このけいはんな学研都市は、遠い山に囲まれた正しく文字通りの盆地なのだけど、そんな中でここだけ極端に、恐ろしくハイテクで人工的な風景が広がっている。どでかいマンション、どでかいスーパー、どでかい研究所、きれいな並木、広い歩道、片側2車線の道路、…完璧な都市、しかし、実際のところ街はまるっきり閑散としていて、なんだかわけもわからず泣けてくるようだった。当日は雲ひとつなく晴れていたにも関わらず、まるで仮病で学校を休んだ日にベッドに寝転がりながら眺める窓の外の空と同じくらい何かむなしいものを感じた。