横浜市黄金町



もう終わってしまったけれど、今年の9月から11月まで、横浜市の黄金町を舞台にして『黄金町バザール』というイベントが開催されていた。
http://www.koganecho.net/index.html
京急線大岡川沿い一帯の民家などを改装して、こじゃれたバザールや飲食店を開いたり、現代美術作家の展示スペースとして貸し出したりした。そうした活動を通して街に人を呼び込み、経済の活性化と街自体のイメージアップをしようというのが狙い。00年代以降、行政が一枚かんでこうしたプロジェクトを立ち上げるケースが珍しくない。仙台、山口、新潟、水戸。私の先輩にあたるキュレーターの橋本誠さんも今年から横浜市の寿町を舞台に似たような活動を展開している。その他にも黄金町には小さな映画祭も開催されているらしい。


もともと黄金町や、あとは曙町あたりは古くからの違法風俗街で、イメージがそんなに良くはない地域である。そこに「アート」を持ち込んで雰囲気をよくしようという清掃活動には、私はなかなか100%は賛同しにくいところがあり、何割かはほとんど「欺瞞なんじゃないか」とすら思える。クリーンなイメージとして打ち出していくことが、かえってよくある「地域×アートの共存」みたいな枠組みに回収されて土着的な趣はすっかり一掃されてしまっている。もちろんそれで喜ぶ人は多いだろうと思う。しかしそれによって窮屈に感じている人も多いだろう。みんなが幸せな社会は無理かもしれないが、少なくとも大多数がイエスと言った方が正しい、とか、クリーンな方が正しい、という風な一方的な決断はできない。


とはいえそういう批判もまた、あまり威力を持たないのが現状だ。でも昨日とても良い話を聞いた。昔寿町あたりに住んでいた32歳フリーターの話によると、10年ほど前には黄金町の風俗街では金髪のロシア人のねーちゃんとかが普通にセーラームーンのコスプレして客引きとかしてたぞ、という。「ちょっと待て、こっちの方がよほどアートじゃないか」と強く思ったのであった。アートをやっている人に開口一番「アートなんてやっても」と言ったところでどうしようもないので、きっとアートの枠組みそのものを横にずらすような言葉が必要だ。