コミュニケーションの参考書、が売れる時代


アパレル関係に何人か知り合いが居て、昨日はラフォーレ原宿のパーティーに行き、今日はあるブラジルブランドのパーティーに行きます。最近よく思うのは、一部のアパレルの接客システムがキャバクラ化しつつある(といっても私はキャバクラに行ったことないので聞いた限りですが)ということで、たとえば「担当をつける」「ついた担当が直筆のDMやメールを送ったりする」「リピーターのためにイベントをやる」などの戦略はかなり共通してきているのです。冒頭に「一部のアパレル」と書きましたが、そうではない店舗も当然たくさんあるのですが、その「一部のアパレル」たちはもはや単に服を売るだけが商売ではなくなっているような気がします。もっと正確に言うと、「服を売る」ということの内容をもっと総合的にとらえ始めた、といった方がいいかもしれません。店舗の場所、棚の色や配置、照明、といった環境デザインだけではなく、わかりやすい意味での「コミュニケーション」を服を売ること、の内部に取り入れようという戦略です。


もちろんアパレルだけではなくて、そのような戦略をとるところは、店舗を構えて客を迎え入れるタイプの商売・業界全般の中で増えていっているという印象があります。それがことごとくキャバクラ化していくというのは、至極当然で、キャバクラはそもそも「コミュニケーション」それ自体を商品として販売している業界だからです。キャバクラで売っているものは、酒でも女の子でもなく、それらを通して得られるコミュニケーション全般です。だからといってなにもアパレル社員がキャバクラで研修したりしているわけではなく、「客×リピート×コミュニケーション」みたいなことを考えたときに、どういった業界であれ、ある一つの共通のシナリオなり原理なりにたどり着くのだと思います。


客商売以外でもたとえばディレクターとかプロジェクトマネージャーみたいな職業は、「コミュニケーション」で給料をもらっている顕著な例だと思います。そういう職業は世界的に特に20世紀に入ってから重宝されるようになったそうですが、その背景には、仕事の内容そのものの多様化や、仕事に関わる人間の多様化などがあったようです。確かにそういった状況では、同じことをやっていてもうまくいかないし、意思疎通をはからなければうまくいかないので、「コミュニケーションしながら試行錯誤していくこと」が重要になってくるのだと思います。「モノ」にお金が払われる時代から、「コミュニケーション」が売れる時代になって、そしてその次に到来するのは、「コミュニケーションのやり方そのものを教えること」にお金が払われる時代です。これだけ言っただけで、社内教育系やカウンセラー系や、思い当たるものはいくつでもあります。


そういった背景を象徴的に示しているのは、(たぶん)2000年以降の『anan』で、会社でもそういう話になったのですが、昔の『anan』は二十代をターゲットにした普通の女性誌で、たまに美男子のヌードを大々的に特集して「女子だってエロが気になっている!/気にしていいんだ!」ということをアピールすることで注目を浴びていたような雑誌だったのに、2000年以降、昔から読んでいる読者に合わせてターゲットの年齢層があがって、いまでは明らかに二十代後半から三十代後半になっており、その内容も、「カラオケでモテるお作法」やら「SMのスキンシッップ」やら、明らかに、「非モテ女子のためのコミュニケーション雑誌」という位置づけになっていて非常にびっくりしました。洋服、アクセサリー、占い、化粧品といった旧来の女性誌コンテンツの面影はどこへやら、という感じで、そもそもコミュニケーション力?のある人にとっては純粋に「モノ」だけ載っていればいいわけで、そうではなくて「コミュニケーションの方法」そのものを伝授してくれる参考書を求めなければいけない女性達が一定層マジでいるのかということを、真剣に考えないではいられない私なのでした。