ロードムービーについて



会社でロードムービーの話題になった。ロードムービーと言えば、王道すぎるけどやっぱり、80 年代のヴィム・ヴェンダースであり、ジム・ジャームッシュであり、その源流にあるジャック・ケルアックをはじめとする50〜60年代ビート・ジェネレーションだという話になる。さらにWikipediaを見てみると、

これらの文化史的な根は、ホメロスの『オデュッセイア』にあるといってもいいだろう。

と書いてあり、これはなるほどと思った。最近だと、アルフォンソ・キュアロン『天国の口、終りの楽園』という映画があって、それもなかなかロードムービーな感じだった。


ロードムービーとは、旅の途中で起こる出来事を物語にした映画のことだが、「これぞロードムービー」と言える(言いたい)作品には、それに加えて以下の特徴がある。

  1. 地平的な空間の広がりがあること
  2. 目的性・クエスト性が乏しいこと
  3. 叙情的であること
  4. ボーイ・ミーツ・ガールであること

時代性、地理的条件、映画的物語、すべてがここに詰まっているという感じがする。特に「2.」に関しては、現代思想にも大きな影響を与えた部分でもある。


Wikipedia内で、主要な作品として紹介されているものの中に、日本国内でも『男はつらいよ』などが挙げられていて、かなりいいところついているなという感じがするんだけど、「空間の広がり」という部分が欠如しているだけに、大手を振って「ロードムビーーー」と言えない感じがある。『裸の大将』もかなり無目的的でボーイ・ミーツ・ガールな感じだがちょっと違う。やはり日本では地理的な制約上、空間の広がり、という意味では難しいのかもしれない。Mr.Childrenの楽曲で『ロードムービー』という歌があって、どこか叙情的な男女の話だけど、そこにも地平線はやっぱり描けない(夜だし)。結局、自分が「ロードムービー」を思い描くときには常に、北アメリカ大陸の荒野の風景がある。一本道をただ疾走する清々しさと空しさも、女の子とメロウな感じでキュン、みたいな雰囲気もその風景の中に溶け込んでこそグッとくる!みたいなとこがある。


よくよく考えると、それは何もかも、中学二年のときに滞在したアメリカ西部の風景そのものだったりすることに気づき、非常に恥ずかしい気分になる。アリゾナの砂漠の中を、白いバンに乗って、後部座席に同年代の男女が6人さわいだりまどろんだり、という感じだったその長期旅行は、そりゃあ何か頭に焼き付くものもあるわなあ、と振り返ると何だか感慨深くなるのでした。とほ。